【I&S インサイト】東京地裁知財部による二つの新たなSEP紛争解決方法について 〜SEP訴訟の新審理要領とSEP調停(SEPJM)〜
DATE 2026.03.17
執筆者:尾池悠子
はじめに
令和8年1月、東京地方裁判所知的財産部4部の連名により、SEP(標準必須特許)紛争に係る二つの発表がなされました。一つが標準必須特許(SEP)に基づく特許権侵害訴訟の審理要領(新審理要領。以下、新審理要領によるSEP訴訟及び和解交渉を「新SEP訴訟」といいます。)であり、もう一つがSEP調停の審理要領(SEPJM[1]要領)です。これらは、訴訟と調停という異なる手続の要領ですが、いずれも、日本の裁判所において、グローバルなSEP紛争全体を解決することを目的としたものであり、世界的注目を集めています。
SEPライセンスにおいては、いわゆるFRAND条件[2]による実施料を定めることになりますが、「FRAND」の曖昧さ故に、SEP保有者(特許権者)とSEPに係る技術を実施している者(実施者)の間で合意に至ることが難しく、長期的な紛争となってしまうことも多くあります。今回発表された新審理要領とSEPJM要領は、いずれもこのようなSEP紛争を早期に解決する新たな道筋を提供するものです。SEPに基づく特許権侵害訴訟においては、SEP保有者が、SEP実施者に対して、SEP侵害による損害賠償や差止めを求めることが基本的な形ですが、これと並行した和解交渉又は調停において、グローバルなFRAND実施料を合意し、ライセンス契約を締結することが新たな二つの手続の目的ということになります。
以下では、これらの要領から読み取れる各制度の特徴を取り上げた上で、今後のSEP紛争の展望について述べたいと思います。
日本におけるこれまでのSEPに基づく特許権侵害訴訟
日本における最も有名なSEPに基づく特許権侵害訴訟に係る判決は、いわゆるApple v Samsung知財高裁判決・決定[3](以下「Apple v Samsung判決」といいます。)です。Apple v Samsung判決においては、①「ライセンスを受ける意思のある実施者」に対する差止めを権利濫用法理により否定、②実施者が「ライセンスを受ける意思を有しない等の特段の事情」がある場合においてはFRAND条件ライセンス料相当額を超える損害賠償請求を許容、③FRAND条件によるライセンス料相当額の計算方式についてはトップダウン方式を採用、といった、SEPに基づく特許権侵害訴訟における非常に重要な考え方が示されました。Apple v Samsung判決は現在も日本におけるSEPに基づく特許権侵害訴訟のリーディングケースといえます。
もっとも、Apple v Samsung判決の考え方については、諸外国の裁判所による算定よりもライセンス料が安くなってしまう可能性があることや、「ライセンスを受ける意思を有しない等の特段の事情」について厳格に判断する旨を明言していることから、特許権者にとってあまり使いやすいものではない側面がありました。実際、日本においてSEPに基づく特許権侵害訴訟が起こされることは少なく、SEP紛争における日本の知財裁判所の存在感が問われている状況であったといえます。
そんな中、2025年に、東京地裁知財部において、いくつかの注目するべき判決が出されました。一つはPantech v ASUS事件[4]であり、FRAND条件によるライセンス相当額の損害を算出するにあたり、「売上高×FRAND料率×本件特許数/全標準必須特許数」との算定式を明らかにしました。この判決は、Apple v Samsung判決の考え方を否定はしなかったものの、実質的にはより高額のライセンス料算定を可能としたものといえます[5]。もう一つは、Pantech v Google事件[6]であり、日本の裁判所において初めてSEPに基づく差止請求が認められたものです。Googleについて、裁判所における和解協議への非協力等を理由にライセンスを受ける意思を否定したものであり、上記のApple v Samsung判決の判示を受けて、日本においては「ライセンスを受ける意思を有しない等の特段の事情」についてはあまり認められないであろうとされてきた流れを変えるものでした。
新審理要領及びSEPJM要領は、このような地裁判決の流れを受けて出されたものであり、東京地裁知財部による、日本におけるEP紛争のあり方を変え、ひいては世界における日本の裁判所の存在感を高めようとする姿勢がより明らかに打ち出されたものといえます。
新たな二つの要領の特徴と比較
(1)新審理要領
東京地裁知財部における、通常の特許権侵害訴訟の審理モデルにおいては、まずは特許権侵害の有無(充足論及び無効論であり、「侵害論」ともいいます。)につき書面2往復での審理を行い、必要に応じて技術説明会を行い、侵害の心証が得られた場合に損害額の算定(「損害論」といいます。)についてさらに審理を進めるとされています。通常、和解交渉は侵害・非侵害の心証を前提に行うために、少なくとも侵害論を終えてから開始されることがほとんどです。筆者が東京地裁知財部にいた頃の経験からいうと、訴訟継続から和解交渉の開始まで、早くても半年程度はかかることが多く、事案によっては1年を超えてしまうこともあり得ます。
これに対して新SEP訴訟においては、第1回期日後からグローバルFRAND実施料の和解交渉が開始され、当事者は訴状・答弁書にこのために必要な主張や情報を盛り込まなければならないとされています。すなわち、原告(SEP保有者)は訴状において算定根拠を具体的に明示した上で、グローバルFRAND実施料を提案しなければならず、被告(SEP実施者)は答弁書において原告(SEP保有者)の算定根拠に対する具体的な認否及び反論を示すとともに、グローバルFRAND実施料に関する対案を提出し、さらには被告製品等の販売数、販売額等に関する証拠も併せて提出しなければならないとされています。また、当事者双方は、第1回期日後速やかに、合意形成を促進する観点から、グローバルFRAND実施料を除くその他の条件について協議し、合意書を作成することとされています。さらに、審理計画においては、権利濫用の抗弁の成否(FRAND条件によるライセンスを受ける意思の有無)が中心に据えられ、充足論及び無効論については、「争点がある場合には」これについても審理計画を立てるという補充的な位置付けとされています。審理計画については、従前の特許訴訟と同様に、書面の2往復を経て技術説明会という形が想定されています。
このような審理のあり方は、通常の特許権侵害訴訟と異なり、SEPに基づく特許権侵害訴訟の場合には、ひとつひとつの特許権侵害の有無を問題とする実益が少ないこと[7]に照らし、充足論及び無効論を踏まえた和解訴訟を行うことよりも、和解手続の早期終結をより重視したものと理解されます。
加えて注目すべきは、新SEP訴訟の和解手続について、「なお、被告がグローバルFRAND実施料の算定に必要な証拠を任意に提出しない場合には、裁判所においてFRAND条件によるライセンスを受ける意思がないものと判断されるおそれがあることにご留意ください。」と記載されている点です。この点は、上記Pantech v Google事件の判断と重なるものであり、本来任意の和解手続でありながら、事実上は被告(SEP実施者)においてこれに応じないことを非常に難しくするものといえます。
さらに、当事者双方がグローバルFRAND実施料を主張するにあたっては、算定根拠が示されている限り、トップダウンアプローチ、比較アプローチ、その組合せのいずれを用いることも差し支えないとされており、Apple v Samsung判決やPantech v Google事件の算定方法にこだわる必要がないと明記された点も注目されます。
(2)SEPJM要領
SEPJMとは調停の一種であり、訴訟とは異なり、そもそもが当事者の合意を目的とする手続です。東京地裁においては、令和元年10月から知財調停制度が運用されていましたが、その中でもSEPに特化した手続が整えられたということになります[8]。SEPJMの調停委員会は、知財部の裁判官1名及び知財事件の経験が豊富な弁護士、弁理士などの専門家(2名)の合計3名により構成されます。
申立人(SEP保有者)は、申立書において算定根拠を具体的に明示した上で、グローバルFRAND実施料を提案しなければならず、相手方(SEP実施者)は、答弁書において申立人(SEP保有者)の提案に対する具体的な認否及び反論を行うとともに、グローバルFRAND実施料に関する対案を提出し、さらに相手方(SEP実施者)製品等の販売数、販売額等に関する証拠も併せて提出する必要があります。この点は、新SEP訴訟における和解手続とほとんど同一といえます。また、充足論及び無効論が補充的な位置付けとなっていることも新SEP訴訟と同様であり、争点がある場合には主張立証の書面を1往復することが想定されています。
SEPJMは原則として3回の期日を設けることとなっており、以下のような流れにより、半年程度での成立を目指すとされています。

SEPJMについても、注目すべきは、「調停が不成立となった場合には、調停調書に、申立人又は相手方が調停に応じる意思がないために不成立となった場合はその旨を記載し、調停案を提出した場合には、調停案及び調停委員会の意見書を添付することとし、当事者双方は、その後の訴訟又は仮処分手続において、権利濫用の抗弁の争点に関し、当該調停調書を提出することができ」るとされている点です。新要領のように明示はされていませんが、実質的には、SEPJMにおける対応が、権利濫用の抗弁について考慮され得るということになります。もっともここでは「FRAND条件によるライセンスを受ける意思」ではなく、権利濫用の抗弁において問題になると記載されていますので、相手方(SEP実施者)だけでなく、申立人(SEP保有者)の姿勢が考慮される可能性もあるように思われます。
(3)二つの制度の比較
以上のように、二つの制度は訴訟と調停という異なるものではありつつ、グローバルFRAND実施料を早期に定めることを中心に据えたこと、交渉に誠実に応じないことが権利濫用の成否(ひいては差止めの可否)に事実上影響し得ると思われることといった点で、似通った制度といえます。
その上で二つの制度の相違点を挙げるとすれば、第一に、充足論及び無効論にかける手間やコストが変わる可能性が高いと思われます。すなわち、新SEP訴訟の場合には、被告(SEP実施者)としては、和解が成立しなければ判決が待っているのであり、充足論及び無効論を争わない場合には少なくとも損害賠償は認容されてしまいますので、充足論及び無効論を争点としないという対応は非常に考えにくいように思われます。そうすると、実際には、和解交渉を行いつつも、充足論及び無効論について主張立証を往復させ、場合によっては技術説明会も行うというケースが多いのではないかと考えられます。これに対してSEPJMの場合、調停では特許権侵害の有無について明確な判断がされるわけではありませんので、相手方(SEP実施者)として充足論及び無効論をあえて争うことはしないという選択肢も十分にあり得るように思います。また、仮に争ったとしても、書面の往復及び技術説明会は訴訟の場合よりも簡素化されていますので、手間やコストは一定程度削減されることになります。
第二に、事案によって、どちらを選ぶことが早期解決につながるかは異なるように思われます。例えば、SEP実施者が充足論及び無効論は争わないと思われる場合には、SEPJMを用いてFRAND実施料の協議に集中することが効率的と考えられます。これに対して実施者が侵害の有無から争うような姿勢を明確にしているような場合においては、調停が成立するような可能性は低く、調停不成立後に訴訟に進む可能性が高いものですので、この場合には最初から訴訟を提起することが効率的と考えられます。もっとも、実際には、どちらと判断することも難しく、まずはSEPJMを用いた上で、不成立だった場合に新SEP訴訟に進むとなることが多いのではないかと思われます。
他のSEPライセンス交渉との比較
SEPライセンスを締結するための手続については、様々なパターンがあり得ます。以下では、そのうちの主なものについて、日本における新SEP訴訟又はSEPJMとの比較を行います。
(1)2者間交渉
2者間交渉とは、SEP保有者とSEP実施者が直接交渉する場合を意味しており、まずはこうした形から交渉が始まることが最も多いと思われます。当然、交渉範囲をどのように設定するのかは当事者次第ということになりますし、合意に至るまでの期間も完全にケースバイケースということになります。仮に早期に進めば手間やコストを削減することが可能ですが、SEPの実施自体に争いがある場合や、いずれかが誠実に交渉に応じない場合[9]や、交渉には応じるものの、両者の主張するFRAND実施料が乖離する場合など、合意形成を困難とする様々な事情があり得ます。
これに対して、新SEP訴訟やSEPJMを用いる場合においては、交渉態度が権利濫用の抗弁に影響する可能性がありますので、双方の真摯な交渉が期待できるほか、裁判所が一定の提案をすることにより、互いの歩み寄りを促進することが期待できます。2者間交渉と訴訟・調停は、併存する選択肢というよりも、まずは2者間交渉から始めて、合意形成が困難となった段階で訴訟・調停に移行するというように使い分けられることが多いといえます。
(2)パテントプールとSEP実施者との交渉
パンテントプールとは、特定の技術に関連する特許を保有する複数の特許権者が、共同企業体を形成し、一括して外部への利用許諾手続きや特許料の徴収、分配などを行う仕組みをいい、複数のSEPに係るパテントプールが存在しています。SEP実施者は、パテントプールとの間で交渉し、合意することにより、一度で複数のSEP保有者からグローバルなSEPライセンスを受けることが可能になりますし、SEP保有者としても、交渉の手間を減らすことができます。
2者間交渉にするか、パテントプールと交渉するかは、多くの場合SEP実施者の選択に委ねられることになります。そして、SEP実施者がパテントプールとの交渉を選択する場合、通常はSEPに係る技術を実施していることや、ライセンスを受けるべきこと自体に争いはないものと思われ、条件交渉が中心となります。パテントプールはライセンスのレートを公表していますので、SEP実施者がこれに同意するのであれば、非常に早く合意に至ることもあり得ますが、他方で条件交渉を行うのであれば、2者間交渉と同様に、合意形成に要する期間の見通しを立てることは難しくなります。
新SEP訴訟やSEPJMは、上記のとおり、こうした任意交渉と比較すると、SEP保有者が一方的に開始することができる上に、裁判所が一定の提案をすることや、交渉態度が件濫用の抗弁の成否により考慮され得ることにより、互いの歩み寄りを促進することが期待できるものです。他方で、新SEP訴訟やSEPJMは基本的に特定のSEP保有者との交渉を念頭に置いていると思われますので、複数のライセンスをまとめて受けたいSEP実施者にとっては、パテントプールとの交渉よりも効率性が劣るということになります。
(3)WIPOにおける手続
海外においては、複数のSEP交渉に用いることができる場がありますが、最も典型的に用いられるのはWIPO(World Intellectual Property Organization)による調停や仲裁の手続です。
WIPOの調停は、当事者間の合意形成を促進するもの(合意するか否かは当事者に委ねられている)であることや、4〜6か月程度の早期合意形成を目指すものであるという点で、日本におけるSEPJMに近いものです。もっとも、WIPOの調停があくまで私的交渉の場という位置付けである[10]のに比べて、SEPJMは裁判所において行われる手続であり、裁判官が関与することや、調停の内容が一定範囲でその後の訴訟に引き継がれることが想定されていることなど、裁判所による事実上の合意形成への促進力がより強いものといえます。
他方で、WIPOの仲裁は、合意の形成をするわけではなく、仲裁人による拘束力ある決定がなされる場であり、比較的訴訟に近いものです。期間は1年を超えることもあり、日本の裁判所において、新SEP訴訟やSEPJMによった方が早期に結論が出る可能性が高いように思われます。WIPO調停の後、合意形成に至らなかったためにWIPO仲裁に進むということも多くあり、WIPOの調停からWIPOの仲裁へ、という流れは、SEPJMから新SEP訴訟へ、という流れと重なるところがあります。もっとも、WIPOは調停も仲裁も当事者の合意があって始めて開始されるのに対して、SEPJMや新SEP訴訟は基本的にはSEP保有者の申立てにより一方的に始めることができるものであるなど、日本における手続の方が強力ということがいえそうです。
(4)各国の裁判所における手続
特許権者は、各国の裁判所において、実施権者に対して、損害賠償請求や差止請求を行うことができますし、これに伴い和解交渉を行うことができます。各国の訴訟をみると、当然ながら、法域ごとに判断枠組みや判断手法が異なり、それぞれに特色があります。
例えば、英国の裁判所は、自らがグローバルFRANDレートを決める管轄権を有しているという考え方により、積極的な判断を示しており[11]、この点は日本の裁判所が判決において示すことができる判断は、特定の特許権(日本の特許に限る)侵害に係る損害額にと限られ、その算定の中でグローバルFRANDレートを検討しているにとどまる点と異なります。もっとも、新SEP訴訟やSEPJMにおいては、グローバルFRAND実施料の合意を目指すことが明確に打ち出されており、判決という形ではないものの、日本の裁判所もグローバルFRAND実施料を決めるにあたって存在感を増しつつあるといえます。
また、例えばドイツの裁判所では差止めが認められやすいという特徴[12]や、米国の裁判所では損害額が大きく認容されやすいといった特徴[13]が挙げられますが、2において述べたとおり、日本の裁判例においても、初めて差止めを認める判断がなされたり、実質的に高い損害算定を可能とするような判断がなされたりと、新たな流れが生まれており、こうした各国裁判所との差は縮まるのかもしれません。
さらに、各国の裁判所における訴訟手続に要する平均的期間と比較すると、新SEP訴訟やSEPJMはより早期の解決を目指しており、迅速さが特徴の一つといえます。
終わりに
以上のとおり、これまで諸外国の裁判所と日本の裁判所においては、裁判所がSEP紛争において判断することができる範囲、差止め基準、損害賠償算定方法等においてギャップが存在していましたが、新SEP訴訟及びSEPJMはこうしたギャップを埋めるとともに、裁判所外の手続と比較しても、裁判所による比較的強い合意形成促進力を提供し、さらにはより迅速にライセンス契約締結に至ることができる可能性を生むものであり、SEP保有者にとっては非常に魅力的な選択肢になるといえます。SEP保有者又はSEP実施者がライセンス交渉の場を検討するにあたっては、ぜひ日本の知財訴訟に精通した専門家にご相談いただければと思います。
以上
[1] SEP Judicial Mediationの略。
[2] Fair, Reasonable, and Non-Discriminatory(公平・合理的・非差別的)な条件を意味します。通常、標準化団体はSEP保有者に対して、FRAND条件でライセンスする旨の表明(FRAND宣言)を義務付けます。
[3] 平成25年5月16日に出された1件の判決(平成25年(ネ)第10043号)と2件の決定(平成25年(ラ)第10007号、同第10008号)をいいます。
[4] 東京地判令和7年4月10日 令和4年(ワ)7976号
[5] Apple v Samsung判決による算定方法は、「売上高×規格に準拠していることが貢献した部分の割合×累積ロイヤリティの上限×本件特許数/必須特許数」というものでした。Pantech v ASUS事件は、Apple v Samsung判決を否定しない書き振りであるが、実質的には「規格に準拠していることが貢献した部分の割合×累積ロイヤリティの上限」を「FRAND料率」と一つのパーセンテージに置き替えたものと解されます。
[6] 東京地判令和7年6月23日 令和5年(ワ)第70501号
[7] 通常SEP保有者は非常に多数のSEP(少なくともSEPと宣言された特許)を保有していますので、当該SEPに係る規格を実施しているSEP実施者がいる場合、一つ一つの特許については無効等の可能性があるとしても、いずれにせよSEP実施者は当該SEP保有者から一定のSEPライセンスを受けなければならないことが想定されます。
[8] やや古い情報ですが、知財部裁判官らが執筆した「知財調停の取組」パテント2022 Vol.75 No.7 105~111頁によれば、運用開始から令和3年12月末までの約2年2か月で申立て件数は26件程度でした。SEPJMは、活用度が高いとはいえなかった知財調停のテコ入れ的な意味もあるように思われます。
[9] 経済産業省が公表している標準必須特許のライセンスに関する誠実交渉指針においては、規範となる交渉態度が示されていますが、法的拘束力はありません。当事者は、いずれ訴訟等において交渉態度を評価される可能性を考慮して、事実上指針に従うか否かを決めるということになります。
[10] 例えば、WIPOの調停は、当事者の合意により開始されますし、調停人も当事者の合意により選ばれるといった特徴があります。
[11] 代表的な英国裁判例としてUnwired Planet v Huawei (UKSC 2020)があります。
[12] ドイツにおいては、差止め訴訟と無効訴訟が別手続であることから比較的早く差止めが進みます。また、ドイツではじまりEU司法裁判所でも争われたHuawei v ZTEの事件においては交渉におけるSEP実施者の義務が比較的厳格に述べられており、SEP実施者はこの厳格な義務を怠ると、unwilling licenseeと判断されて差止めが認められることになります。
[13] 米国においては、陪審が関与することや、故意による侵害の場合に損害額を上げることが可能であることなどから、高額な賠償額が認められる傾向があります。代表的には、Microsoft v Motorola (W.D. Washington 2013)事件があります。
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