【I&S インサイト】景品表示法の不当表示規制と特定商取引法(特商法)の通信販売誇大広告規制の同時適用(連携)について

執筆者:宮内 優彰

 目次

 第1 景品表示法と特商法の連携の必要性と現状

 第2 景品表示法の不当表示規制と特商法の通信販売誇大広告規制の相違点

 第3 今後の景品表示法と特商法の同時適用に関する若干の考察

 

 

第1 景品表示法と特商法の連携の必要性と現状

 

表示規制と聞いて一般的に思いつくのは景品表示法ではないでしょうか。しかし、表示に関する規制は他の様々な法律においても定められており、理論上は同時適用ができるものが多いように思われます。

 

特定商取引法(特商法)においても、通信販売を中心に表示・広告規制が定められており、20216月から20221月まで開催されていた消費者庁の「アフィリエイト広告等に関する検討会」の報告書では、悪質な事業者への対応として、景品表示法と特商法との連携の必要性が示されたところです。

その流れも踏まえ、2022年3月より同庁で開催されている「景品表示法検討会」では、景品表示法に関する課題が議論されており、第4回会合(6月23日開催)における消費者庁提出資料1では、悪質な事業者への対策として、景品表示法と特商法との連携に関して速やかに検討を進め、年内を目途に取りまとめを行う旨が示されています。

 

なぜ連携の必要性があるかということですが、端的にいえば、景品表示法と特商法とでエンフォースメントに違いがあるということです。インターネット等の発展に伴い表示物の数も増え景品表示法の執行が活発になる一方、特商法には業務停止命令や業務禁止命令(いずれも後述)といった営業自体に制限をかける非常に強力な執行が規定されていることから、悪質な表示を行なった事業者に対する執行力を強化する上で連携が必要になってくるということだと思われます

 

実は現時点では、景品表示法と特商法の同時適用は国(消費者庁)の処分としては存在しておらず、大阪府2や埼玉県3などにおいて先例があるという状況にとどまります。地方公共団体において同時適用がなされているのは、国と異なり景品表示法と特商法を所管する部署が同じであるということも理由の1つなのではないかと推察されます。

 

今後、景品表示法と特商法の連携に関して法令や指針等で手当がなされるのかなどは現時点では不明ですが、本年中を目処に何らかの消費者庁としての見解が示される見込みであることから、今後は国の処分においても両法の同時適用が行われる可能性が高まることが予想されます

 

景品表示法と特商法の主要な共通点や差異に関しては、消費者庁が第1回「景品表示法検討会」で提出した資料4内に整理された以下の表があり、参考になります(55頁)。

 

※出典:第1回「景品表示法検討会」における消費者庁提出資料

 

景品表示法と特商法の同時適用に関しては様々な場面が想定されますが、本稿では、適用の場面が多いと思われる通信販売での不当・誇大表示に関して、景品表示法と特商法の相違点を整理するとともに、今後の同時適用に関する若干の考察を行います

 

 

第2 景品表示法の不当表示規制と特商法の通信販売誇大広告規制の相違点

 

景品表示法は、「優良誤認表示」及び「有利誤認表示」を禁止する一方、特商法では通信販売における「誇大広告」を禁止しています5

 

両者に関する規定は以下のとおりです。

景品表示法

(優良誤認表示:5条1号)

商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの

 

(有利誤認表示:5条2号)

商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの

 

特商法 

(誇大広告:12条)

販売業者又は役務提供事業者は、通信販売をする場合の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件について広告をするときは、当該商品の性能又は当該権利若しくは当該役務の内容、当該商品若しくは当該権利の売買契約又は当該役務の役務提供契約の申込みの撤回又は解除に関する事項(第十五条の三第一項ただし書に規定する特約がある場合には、その内容を含む。)その他の主務省令で定める事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない。

 

上記規定の文言などを参照しつつ、細かく精査していくと、景品表示法の優良誤認表示、有利誤認表示と特商法の通信販売誇大広告には以下の【比較表】のような共通点と差異があると考えられます(主要な差異の部分を赤色及び青色に変えております)。

 

比較表(当事務所で作成)】

以下、1〜6にて詳細に述べます。

 

1 表示の内容に関して

 

景品表示法の優良誤認表示は「商品又は役務の品質、規格その他の内容について」なされるものであり、有利誤認表示は「商品又は役務の価格その他の取引条件について」なされるものです。

「その他の内容」「その他の取引条件」といった包括的な文言が使用されていることから、相当広く解されると思われ、該当するかはあくまでケースバイケースであるとはいえ、表示の内容という観点から景品表示法の不当表示規制の対象外となるケースはあまり想定しづらいように思われます。

 

これに対して、特商法の通信販売誇大広告は、

「当該商品の性能又は当該権利若しくは当該役務の内容、当該商品若しくは当該権利の売買契約又は当該役務の役務提供契約の申込みの撤回又は解除に関する事項」

または

「その他の主務省令で定める事項」

に関する表示である必要があります。

そして、主務省令である特商法施行規則の11条では、以下の事項が掲げられています。

 

1 商品の種類、性能、品質若しくは効能、役務の種類、内容若しくは効果又は権利の種類、内容若しくはその権利に係る役務の種類、内容若しくは効果

2 商品、権利若しくは役務、販売業者若しくは役務提供事業者又は販売業者若しくは役務提供事業者の営む事業についての国、地方公共団体、通信販売協会その他著名な法人その他の団体又は著名な個人の関与

3 商品の原産地若しくは製造地、商標又は製造者名

4 法第十一条各号に掲げる事項

 

(1)優良誤認表示に関して

 

この点、特商法12条が「当該商品の性能又は当該権利若しくは当該役務の内容」という抽象的な文言になっていることに加え、特商法施行規則11条1号が「商品の種類、性能、品質若しくは効能、役務の種類、内容若しくは効果又は権利の種類、内容若しくはその権利に係る役務の種類、内容若しくは効果」と幅広に規定していることからすれば、商品・役務の内容に関する誤認である優良誤認表示に関しては、景品表示法と特商法の通信販売誇大広告とで実質的な差はないように思われます

 

(2)有利誤認表示に関して

 

他方、取引条件に関する表示である有利誤認表示については、景品表示法の方が適用範囲が広いように思われます

 

すなわち、特商法の通信販売誇大広告に関する特商法12条及び特商法施行規則11条1号〜3号には取引条件に関して特段の規定はないことから、特商法施行規則11条4号に基づき特商法11条1号〜5号及び特商法11条6号から委任を受けた特商法施行規則8条各号を参照する必要があるところ、特商法11条1号〜5号及び特商法施行規則8条各号のうち取引条件に関する定めは以下の事項に限定されています。

 

特商法11条

1号:価格(及び送料)に関する事項

2号:代金の支払方法・時期に関する事項

3号:商品・役務の引き渡し(提供)時期に関する事項

4号:申込期限に関する事項

5号:申込みの撤回・契約解除に関する事項

特商法施行規則8条

4号:代金(及び送料)以外の費用に関する事項

5号:契約不適合責任に関する事項

7号:2回以上契約を締結する場合における販売(提供)条件に関する事項

8号:販売数量その他の特別な販売条件に関する事項

 

そこで、上記のいずれかに該当する取引条件に関しては誇大広告の内容となりますが、逆にいえば、これらの事項に該当しなければ、たとえ取引条件に関して誤認を招く表示を行なったとしても、特商法の通信販売誇大広告規制は適用されないということになります。

 

このようなことからしますと、例えば、景品表示法において有利誤認表示の例としてよく挙がるキャンペーン延長や同一(類似)キャンペーンの繰返しなどは、期間限定販売(申込み)キャンペーンの場合であれば、特商法11条4号に該当するとして誇大広告の対象になるものの、ポイント付与や景品(特典)キャンペーンなどの場合には、直ちに誇大広告として規制されると読むことはできないようにも思われます。

 

2 誤認の内容に関して

 

景品表示法の優良誤認表示は、

「一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示」

であり、有利誤認表示は、

「実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示」

となります。

 

また、特商法の通信販売誇大広告は、

「著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」

となります。

 

(1)実際と対比した優良誤認表示・有利誤認表示に関して

 

景品表示法、特商法ともに「実際のもの・・・よりも・・・著しく優良(有利)」と規定されていることからしますと、「実際」と対比した優良誤認表示・有利誤認表示に関しては、誤認の内容に関して景品表示法と特商法の通信販売誇大広告とで特段の差はないように思われます

 

(2)他の事業者と対比した優良誤認表示・有利誤認表示に関して

 

「他の事業者」と対比した優良誤認表示または有利誤認表示に関しては、特商法の通信販売誇大広告に関しては明示的な文言はないものの、「著しく事実に相違する表示」は規制されており、これに該当するものと考えられます。

そこで、「他の事業者」と対比した優良誤認表示・有利誤認表示に関しても、景品表示法と特商法の通信販売誇大広告とで実質的に差はないように思われます

 

3 表示から得る認識の判断基準に関して

 

景品表示法の優良誤認表示及び有利誤認表示は「一般消費者」に対して行われるものであり、表示から得る認識の判断基準が一般消費者であることは明らかといえます。

 

他方、特商法の通信販売誇大広告では単に「広告するとき」となっており、表示の相手方に関する特段の制限はないようにも思われます。

ただし、消費者庁の逐条解説6では、誇大広告であるかは一般消費者を基準に判断する旨の記載がなされており(88頁)、特商法の通信販売規制自体が、購入者が「営業のため」または「営業として」申込みや契約締結を行う場合には適用除外となる(特商法26条1項1号)ことからすれば(すなわち、対事業者取引は基本的には適用除外となると考えて良いことからすれば)、一般消費者を基準に表示から得る認識を判断するとするこの見解は妥当なものではないかと考えられます。

 

よって、景品表示法、特商法ともに、表示から得る認識の判断基準は一般消費者ということになると考えられます

 

4 不実証広告規制

 

景品表示法において、不実証広告規制は優良誤認表示にのみ認められていますが(景品表示法7条2項、8条3項)、特商法の通信販売誇大広告においては、条文上は優良誤認表示と有利誤認表示ともに不実証広告規制が適用されます(特商法12条の2)。

 

5 エンフォースメント

 

景品表示法の優良誤認表示または有利誤認表示とされた場合、その是正等を命じる措置命令(景品表示法7条1項)に加え、一定の要件のもとで課徴金納付命令(景品表示法8条1項)の対象にもなります

 

これに対して、特商法の通信販売誇大広告に該当する場合、その是正等を命じる指示(特商法14条1項)だけでなく、業務停止命令(特商法違反に係る通信販売業務を一定期間停止することを命じるもの)(特商法15条1項)や業務禁止命令(特商法違反に係る通信販売業務に関して重要な役割を果たしていた役員等に対し一定期間同様の業務を行うこと禁止するもの)(特商法15条の2第1項)の対象にもなります

 

また、特商法の通信販売誇大広告規制に違反した場合には、景品表示法の不当表示規制違反とは異なり直罰の規定もあります(特商法72条1項1号)。

 

6 適用除外に関して

 

景品表示法の優良誤認表示、有利誤認表示に関して、表示する商品・役務に係る取引類型に応じた適用除外の規定はないように思われます。

 

他方、特商法の通信販売誇大広告規制に関しては、同法26条1項各号に定める取引類型に該当する場合には適用除外になるとされております

 

 

第3 今後の景品表示法と特商法の同時適用に関する若干の考察

 

上記第2で述べたとおり、(特に優良誤認表示の場合は)景品表示法の不当表示規制が適用される場合において、特商法の通信販売誇大広告規制を適用できないということは、特商法26条1項各号の適用除外に当たらない限り考えにくいように思われます。

 

今後、悪質な事業者に対しては、国の執行においても景品表示法と特商法の同時適用を積極的に行なうべきとの方針が定められた場合には、景品表示法の不当表示規制と特商法の通信販売誇大広告規制は最も端的に重畳が可能なものであるように思われますので、同時適用が行われるケースが登場する可能性は大いにあるのではないかと考えられます。

 

仮に同時適用がなされた場合、対象事業者には課徴金納付命令と業務停止命令(及び役員等に対する業務禁止命令)の双方が課される可能性があり、その場合の経済的・経営的損失は計り知れません

 

事業者においては、不当・誇大な広告を行わないよう日頃から表示作成体制、管理体制を構築することはもちろん、万が一、景品表示法の不当表示を疑われた場合には、同時に特商法の誇大広告規制も適用される可能性があることを念頭に置きつつ、悪質なケースと評価されないよう適切な対応を取ることが求められます

 

以上

 


 

  1. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/meeting_materials/assets/representation_cms212_220622_1.pdf
  2. 健康機器の訪問販売事業者に対する景品表示法に基づく措置命令及び特商法に基づく業務停止命令(3カ月)(大阪府 2020年3月18日)
  3. ダイエットサプリメント等の販売を行う通信販売事業者に対する景品表示法に基づく措置命令(埼玉県 202031)及び特商法に基づく業務停止命令(3か月)及び指示並びに代表者に対する業務禁止命令(3か月)(埼玉県 2020年4月)
  4. https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/meeting_materials/assets/representation_cms212_220315_05.pdf
  5. なお、特商法では、通信販売以外でも連鎖販売取引、特定継続的役務提供、業務提供誘引販売取引において誇大広告規制が存在します。
  6. https://www.no-trouble.caa.go.jp/pdf/20220601la03_04.pdf

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