【I&S インサイト】監視・摘発体制を踏まえた医療広告の実務

執筆者:越田 雄樹

 

 医療広告の現状

 

ここ近年、美容医療を含む各医療分野で、WEBページ等を用いた広告が用いられることが増加していますが、この広告には患者を誘因するために様々な表現を含んでおります。そして、この表現はマーケティング活動が活発化するにつれて過激化する傾向にあり、医療における広告の内容の適否が大きな問題となっています。

 

本稿では医療広告の監視摘発状況に加え、医療広告の法的整理等について概説します。

 

 医療に係る広告の監視・摘発体制

 

医療に係る広告については主に厚生労働省及び地方自治体が監視指導体制を構築しています。

そして、厚生労働省は、医業等に係るウェブサイトの監視体制強化事業として「医療機関ネットパトロール」をデロイト トーマツ コンサルティング合同会社に外部委託しております。

 

(1)「医療機関ネットパトロール」における監視体制

 

「医療機関ネットパトロール」とは、いわゆる医療に係る広告についての通報窓口であり、「医療機関ネットパトロール」事業においては、一般の方からの通報に加え、能動監視も行われています。

通報や能動監視において発見された医療広告については、厚生労働省が公表している医療広告ガイドラインに照らして適法性が審査されます。

そして、違法な広告であった場合、医療機関等に対して広告の是正に係る通知がなされます。

この通知に対して、医療機関が広告の中止や是正を行ったことが確認できた場合、対応完了として当該広告に係る監視は終了します。

一方、未対応の場合や対応が不十分な場合、当該広告について自治体へ情報が連携されます。そして、自治体によって広告の内容に係る改善指導がなされます。

この改善指導においても対応がなされない場合、医療法第6条の8第2項の規定に基づき中止命令又は是正命令といった手続きに移行します。この手続きに従わない場合には、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金となります。

また、場合によっては、医療法第28条の規定に基づく管理者変更命令がなされたり、医療法第29条第1項第4号に該当するとして、同項の規定による病院又は診療所の開設の許可の取り消し、又は開設者に対し、期間を定めて、その閉鎖を命ぜられる可能性があります。

 

 

(2)審査件数等

 

「医療機関ネットパトロール」における審査等の件数は下記の図表のとおりとなっていますが、令和3年度においては、通報7,378件でそのうち医療広告関係の審査対象は775件となっています。

 

(第20回 医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会資料(令和5年1月12日) 厚生労働省)

 

また、能動監視を含めると、令和3年度に審査に至った件数は約1,200件にものぼっており、約850件の通知が発出されるに至っています。

これら件数は例年ばらつきがありますが、非常に多くの広告が審査の対象となっており、事業を行う上では無視できるものではありません。

そうすると、医療関係事業者においては、広告をマーケティング活動で用いようとする場合、厳しい医療法の規制の下で対応しなければならないこととなります。

以下では、実際にどのような規制に服する必要があるのか等を説明します。

 

 医療広告とは

 

そもそも「医療広告」とは何を意味するのかについてですが、医療法第6条の51項は、

 

何人も、医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して、文書その他いかなる方法によるを問わず、広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示(以下この節において単に「広告」という。)をする場合には、虚偽の広告をしてはならない。

と規定しています。

 

そして、医療広告ガイドラインにおいては、次の及びのいずれの要件も満たす場合に、医療広告に該当するとされております。

患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)

医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)

 

医療広告には、WEBのホームページや電子メールなどだけでなく、バナー広告やリスティング広告も該当する可能性があります。

そして、医療法第6条の51項は、「何人も」と規定しているとおり、①②の要件を充足する場合、医療機関だけでなく、医療ビジネスを行う事業者、インフルエンサー等も適用対象となり得ます。

 

(1)患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)について

 

ここでいう「誘引性」は、広告に該当するか否かを判断する情報物(表示物)の客体の利益を期待して誘引しているか否かにより判断することとされております。

 

(2)医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性) について

 

ここでいう特定性については、当該表示内容に、医療機関名、医師名が記載されている場合だけでなく、表示に記載されている住所、電話番号及びウェブサイトのアドレス等から病院等が特定可能である場合も含まれます。

この判断にあたっては、一般人が容易に当該病院等を特定できるような場合といえるかどうか、という基準を基に判断されると考えられます。

 

 禁止の対象となる広告

 

医療法第6条の51項及び第2項各号は、禁止される広告の類型を定めています。

具体的には以下のとおりです。

(1) 内容が虚偽にわたる広告(虚偽広告)

(2) 他の病院又は診療所と比較して優良である旨の広告(比較優良広告)

(3) 誇大な広告(誇大広告)

(4) 公序良俗に反する内容の広告

(5) 広告可能事項以外の広告

(6) 患者等の主観に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談

(7) 治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等

(8)品位を損ねる内容の広告、他法令又は他法令に関連する広告ガイドラインで禁止される内容の広告

 

(1) 内容が虚偽にわたる広告(虚偽広告)

 

ここでいう虚偽広告には、広告に示された内容が虚偽であり、患者に著しく事実と相違ある情報を与えている場合があたります。

例えば、

  • 「厚生労働省が認可」といった表示
  • 「絶対安全」「絶対治る」等の安全性、完治の保証にあたる表示
  • 1日で全ての治療が終了します。」等の治療期間が事実と相違する表示
  • 加工したビフォーアフター画像の表示
  • データの根拠を明確にしない調査結果に係る表示

などが虚偽広告に該当する可能性があります。

なお、虚偽広告を行った場合は、「6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」となる可能性があります。

 

(2) 他の病院又は診療所と比較して優良である旨の広告(比較優良広告)

 

比較優良広告には、施設の規模、人員配置、提供する医療の内容等について、自らの病院等が他の医療機関よりも優良である旨を表示する場合があたります。

一方で、客観的な事実の記載自体が禁止されているわけではありませんが、「日本一」、「№1」といった表示は、客観的に事実であったとしても禁止されています。

例えば、

  • 「当院は地域No.1の医師数の病院です。」という表示
  • 「当病院は、A病院よりも安価で治療が受けられます。」という表示

などが、比較有料広告に該当する可能性があります。

また、医療広告ガイドラインにおいては、著名人との関連性を強調するなど、患者等に対して他の医療機関より著しく優れているとの誤認を与えるおそれ がある表現は、患者等を不当に誘引するおそれがあることから、比較優良広告として取り扱うこととされています。

例えば、

  • 「サッカー選手の〇〇選手に患者第1号になっていただきました。」という表示

なども比較有料広告に該当する可能性があります。

 

(3) 誇大な広告(誇大広告)

 

誇大広告には、必ずしも虚偽ではないが、施設の規模、人員配置、提供する医療の内容等について、事実を不当に誇張して表現していたり、人を誤認させる表示があたります。

例えば、

  • 「比較的安全な手術です。」という表示
  • 「〇〇学会認定」などで、当該医療機関関係者自身が実質上運営している団体や活動実態のない団体などによる資格認定や施設認定を受けた旨の表示
  • 医療機関の名称として「センター」と記載している表示
  • 「受診可能回数 無制限」などを表示する場合で、実質的には限度回数等があるもの

などが誇大広告にあたる可能性があります。

 

(4) 公序良俗に反する内容の広告

 

公序良俗に反する内容の広告として、わいせつ若しくは残虐な図画や映像又は差別を助長する表現等を使用した広告は禁止されています。

 

(5) 広告可能事項以外の広告

 

広告可能事項については「5.」において記載しますが、広告可能とされた事項以外の表示は禁止されています。

 

(6) 患者等の主観に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談

 

ここで禁止されている体験談広告については、医療機関が、治療等の内容又は効果に関して、患者自身の体験や家族等からの伝聞に基づく主観的な体験談を、当該医療機関への誘引を目的として表示する場合があたります。

なお、個人が運営するウェブサイト等及び第三者が運営するいわゆる口コミサイト等への体験談の掲載については、医療機関が広告料等の費用負担等の便宜を図って掲載を依頼しているなどによる誘引性が認められない限りは、広告に該当しないとされています。

 

(7) 治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等

ビフォーアフター写真は、術前又は術後の写真に通常必要とされる治療内容、費用等に関する事項や、治療等の主なリスク、副作用等に関する事項等の詳細な説明を付していない場合、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等にあたると考えられます。

 

(8)品位を損ねる内容の広告、他法令又は他法令に関連する広告ガイドラインで禁止される内容の広告

 

品位を損ねる内容の広告には、費用を強調した表示や、提供される医療の内容とは直接関係ない事項の記載された表示があたります。

例えば、

  • 「キャンペーン期間中 50%オフ」
  • 「治療を受けた方に〇〇プレゼント」

などが品位を損ねる内容の広告にあたります。

また、他法令又は他法令に関連する広告ガイドラインで禁止される内容の広告については、薬機法、景表法等の法令において規制される広告があたります。

 

 広告可能事項

 

医療法法第6条の5第3項は、

第一項に規定する場合において、次に掲げる事項以外の広告がされても医療を受ける者による医療に関する適切な選択が阻害されるおそれが少ない場合として厚生労働省令で定める場合を除いては、次に掲げる事項以外の広告をしてはならない。

と規定しており、法又は広告告示により広告が可能とされた以下の事項以外は、文書その他いかなる方法によるかを問わず、何人も広告をしてはならないと定めています。

 

(1)医師又は歯科医師である旨

(2)診療科名

(3)当該病院又は診療所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項並びに当該病院又は診療所の管理者の氏名

(4)診療日若しくは診療時間又は予約による診療の実施の有無

(5)法令の規定に基づき一定の医療を担うものとして指定を受けた病院若しくは診療所又は医師若しくは歯科医師である場合には、その旨

(6)第五条の二第一項の認定を受けた医師である場合には、その旨

(7)地域医療連携推進法人の参加病院等である場合には、その旨

(8)入院設備の有無、第七条第二項に規定する病床の種別ごとの数、医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の従業者の員数その他の当該病院又は診療所における施設、設備又は従業者に関する事項

(9)当該病院又は診療所において診療に従事する医療従事者の氏名、年齢、性別、役職、略歴その他の当該医療従事者に関する事項であつて医療を受ける者による医療に関する適切な選択に資するものとして厚生労働大臣が定めるもの

(10)患者又はその家族からの医療に関する相談に応ずるための措置、医療の安全を確保するための措置、個人情報の適正な取扱いを確保するための措置その他の当該病院又は診療所の管理又は運営に関する事項

(11)紹介をすることができる他の病院若しくは診療所又はその他の保健医療サービス若しくは福祉サービスを提供する者の名称、これらの者と当該病院又は診療所との間における施設、設備又は器具の共同利用の状況その他の当該病院又は診療所と保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者との連携に関する事項

(12)診療録その他の診療に関する諸記録に係る情報の提供、第六条の四第三項に規定する書面の交付その他の当該病院又は診療所における医療に関する情報の提供に関する事項

(13)当該病院又は診療所において提供される医療の内容に関する事項(検査、手術その他の治療の方法については、医療を受ける者による医療に関する適切な選択に資するものとして厚生労働大臣が定めるものに限る。)

(14)当該病院又は診療所における患者の平均的な入院日数、平均的な外来患者又は入院患者の数その他の医療の提供の結果に関する事項であつて医療を受ける者による医療に関する適切な選択に資するものとして厚生労働大臣が定めるもの

 

 限定解除

 

原則として、医療広告としては、広告可能事項のみの記載が認められていますが、以下の要件を充足した場合、限定解除として、広告可能事項の限定を解除し、他の事項を広告することができることとなります。

 

【要件】

(1)医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること

(2)表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること

(3)自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること

(4)自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること

 

(1)医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること

 

一般人が認知できる状態にない広告であって、患者等が自ら求めた情報を表示する広告については(1)を充足すると考えられます。

しかし、スポンサーとして表示されるものや検索サイトの運営会社に対して費用を支払うことによって意図的に検索結果として上位に表示される状態にしたものなどは、(1)を満たさないと考えられます。

なお、バナー広告やリスティング広告は限定解除の要件(1)を充足しないと考えられていることから、広告可能事項以外は広告することができないと考えられています。

 

(2)表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること

 

電話番号やe-mailのアドレス等の問い合わせ先が記載されていること等により、容易に照会が可能であり、それにより患者等と医療機関等との情報の非対称性が軽減されるよう担保されている場合、(2)を充足すると考えられます。

なお、電話番号が記載されているものの、ほとんどつながらない場合や、アドレスにメールを送付しても返信の実態がない場合などは(2)を充足しない可能性があります。

 

(3)自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること

 

自由診療においては、通常必要とされる治療内容、標準的な費用、治療期間及び回数を掲載し、患者等に対して適切かつ十分な情報を分かりやすく提供することで(3)を充足します。

なお、リンクを張った先のページへ掲載したり、利点や長所に関する情報と比べて極端に小さな文字で掲載したりといった形式では、(3)を充足しない可能性があります。

 

(4)自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること

 

自由診療においては、その治療に係る主なリスクや副作用などの情報に関しても掲載し、患者等に対して適切かつ十分な情報を分かりやすく提供することで(4)を充足します。

なお、リンクを張った先のページへ掲載したり、利点や長所に関する情報と比べて極端に小さな文字で掲載したりといった形式では、(4)を充足しない可能性があります。

 

そのほかに、未承認医薬品等を自由診療に使用する場合は、医療広告ガイドラインに記載された限定解除の要件として、具体的には、以下のような内容を含む必要があります。

① 未承認医薬品等であることの明示

② 入手経路等の明示

③ 国内の承認医薬品等の有無の明示

④ 諸外国における安全性等に係る情報の明示

 

 実務上の対応

 

前述のとおり、医療広告に係る監視は厚生労働省の委託事業を中心に活発に行われており、医療分野において広告を行うにあたっては、医療広告にあたらない方法で行う又は医療広告にあたる前提で医療広告ガイドラインを遵守して行う必要があります。

また、広告作成にあたっては、医療広告ガイドライン以外に、景品表示法や薬機法の広告規制も無視できません。

医療機関や医療関係事業者の方々は、広告の作成にあたっては弁護士にご相談いただくなどして、適法な方法でマーケティング活動をしていただく必要があります。

以上


 

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執筆者
  • 越田 雄樹
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